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やさぐれ漫画描き、広枝出海のブログです。 創作同人情報、美術展やら映画感想など 獺祭状態でつらつら書きたいな~、と。 カワウソは取った魚を祭るように陳列するそうですが、散らかしているだけとは言ってはいけないお約束(^_^;)          無断転載はどうぞご遠慮下さいませ<(_ _)>

   
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『愛の勝利を~ムッソリーニを愛した女』(監督マルコ・ベロッキオ、2009年イタリア・フランス)を見ました。


ムッソリーニの、存在を消された「最初の妻」の実話が元なんだそうです。


まだムッソリーニが無名で貧乏していた頃、物心両面、自分の全てを懸けて支えた「妻」イーダ。教会で結婚式を挙げ、男の子まで儲けながらやがて二人の関係は破綻する。だが、ムッソリーニはイーダと関係を並行して別の妻子を作っていた。
「自分こそが結婚証明書もある正式な妻なのに…!」
イーダは自分こそが正当な妻なのだと周囲に強く訴える。カトリックの国、イタリアでは離婚が許されない。イーダが妻だというのが真実なら、重婚罪。それは政治家として成功しつつあるムッソリーニにとって致命傷だ。ムッソリーニはイーダを狂人だとして、精神病院に軟禁してしまう。それでもイーダはあきらめず、何年も何年も独房のような病室で手紙を書きつづるのだった。
「私はムッソリーニの妻です。
 証拠もあります。」


この「証拠」。教会で発行された結婚証明書を切り札として、イーダは監獄のような病院でムッソリーニに闘いを挑み続けます。一方、ムッソリーニもイーダの実家を家探しさせてまで結婚証明書を奪おうと手を尽くします。何も持たなかった頃、深く愛し合っていたはずの二人にはいまや憎悪だけが渦巻くのみ。恥も外聞もなくムッソリーニの歓心を引こうとするイーダは、本当に狂人のようです。この愛憎劇がなんといってもすごいです。
だって何といってもこの映画、フランスとイタリアの制作ですから(笑)!この濃厚~なテイストは日本人にはたぶんムリ(^_^;)
湿気のない、ラテンの情念の世界です。

正直あんまり得意なジャンルじゃないものの、この女優さん(ジョヴァンナ・メッツォジョルノ)の強烈な眼力に最後まで引きこまれてしまいました。お話自体は救いのカケラもない、陰惨な物語ですが、イーダのまなざしはインパクト大です(〃゚ω゚〃)強~く記憶に残ります。
イーダの主張は果たして真実だったのか否か。
傍からみれば彼女は「負けた女」で可哀そうな存在だと思います。けれどこの映画の、全身全霊で自分を主張するイーダは負けてないです。女優さんの演技力の勝利ではないでしょうか。
ただ、息子…。
彼の末路は本当にひどい。たまたま、そこの子に生まれてしまっただけで…。子供の話は本当に救いがないので、気力のない時にはオススメできない映画です。

それから忘れちゃいけないムッソリーニ!
私はハゲオヤヂ姿しか知らなかったので、この映画の渋いムッソリーニ(フィリッポ・ティーミ)には「ああ!これぢゃ執着しちゃうよね!大人気で独裁者にもなっちゃうよね(≧ω≦o)!」って感じでした(笑)実際の若いころのムッソリーニもイケメンだったのかな??想像つかないけど…(;´ω`)

原題はVincere。イタリア語で「勝利」だそうです。確かに主人公は闘い、勝利を得ようとします。が、決して勝てたわけではないので、邦題はとても気が利いてるなと思いました。あくまで「愛の勝利『を』」な映画です。「を」ひとつに色んな意味が込められてていい感じ。珍しく邦題の方がセンスいいな~、って感じた映画です。

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『アイアンスカイ』(ティモ・ヴオレンソラ監督 2012年、フィンランド・ドイツ・オーストラリア制作)を見ました。

 

時は2018年。

大統領の人気取りと希少資源ヘリウム3採取を目的に、月へ再び降り立ったアメリカ。
だが、月の裏側にはナチス第4帝国(Σ( ゚ω゚)!!)の要塞が築かれていた。
アメリカの宇宙飛行士を「地球人が攻めてくる前兆だ!」と判断したナチスは先手必勝とばかりに地球へ、アメリカへ攻め込む     

 

ここで「月基地築けるような軍事力があったら、そもそも第二次大戦で負けてないよね?」とか突っ込んぢゃダメっす(^_^;)そこは触れないお約束。いちいち考えたらこのテの映画は見られません()

月基地というハイテクな響きにも関わらず、ナチ要塞ってばサイドカー付きバイク走ってます。
黒制服は当然外せません。
宇宙船は基本の円盤型にツェッペリン飛行船型 (゚ω゚;;;)!

この宇宙船の大事な動力源が、捕まえた黒人宇宙飛行士(でも職業モデル)の持ってたiphoneとゆーのが設定凝りまくり。←秘蔵の巨大戦艦はipadが動力源になるのです。どんだけすごいんだジョブズ!

 

この映画が独特なのは、ファンからカンパ(一億!)を募って、しかも制作の手伝いもして貰いながら作られたファンとスタッフの愛のコラボ( ´ω`)作品だということ。
B級ナチ映画はゴロゴロしてますが、この特殊な制作過程に魅かれたのが見るきっかけでした。しかも制作はフィンランドにドイツ
アメリカのB級映画なら展開も読めますが、これは期待しないわけにはいきません。日本だったら、自前で日本軍もののB級映画なんてありえないですよね?

と、いうわけでのナチ側視点で話は展開します。

血気盛んにアメリカに降り立ったナチ次期総統候補アドラー(ゲッツ・オットー)と、彼の婚約者レナーテ(ユリア・ディーツェ)は、そのイカレっぷりを大統領広報官(エキセントリックなファッションコーディネーター(^_^;))に気に入られ、ホワイトハウス入りした挙句に大統領の演説指南役に。
なんとナチ仕込みの演説は大好評。
ところでこの大統領、どっからどー見てもペイリンさん(コメンタリーでは明言してます)極右な演説が受けちゃうとか、ただのジョークと笑い飛ばせない怖さが潜んでます。

ストーリーは正直もっと弾けてもいいんじゃないかな?と感じましたが、自虐コメディだと思えばこれでも快挙なのかも。
全体的な筋より、ちょこちょこ挟まれる政治ネタが私的ツボでした。
国連で、襲撃してきた宇宙船をすかさず「うちの将軍様が作りました!」とぶち上げて、しかも即笑い飛ばされちゃう某国代表とか (_ω_)
勝ち戦で票を獲得したい大統領が「アメリカがまともに倒したのはナチだけなんだから」って言っちゃうとことか(この台詞、ハリウッド映画だったら採用されるのかなぁ…)

以下はややネタバレですが…。

襲い来るナチ船団に「ラッキー♡戦争ができる!これで次期大統領選は安泰♪」とアメリカ大統領が手柄を独り占めしようとしたら、他国もぞろぞろと宇宙船を出してくるくだり。
おおお!日本の戦艦もあるよーーーっ (〃゚ω゚〃)!!
出資したファンの国籍を考えて…、てなことを監督が説明してたので、理由はそんなところなのかもですが「ああ、日本も軍事的に国際社会で認められてるんだ…」と、なんかすごく嬉しかったです。

 

一番感心したのは、資金不足と言う割にはちゃんとSF映画な仕上がりになっているところ。もっとCGとかチープかなと想像してたんですが、意外でした。
ファンを裏切れないという情熱の勝利なんでしょうか。

けど、これだけは言いたい…っ。

ヒロインは金髪の美人女優さんで申し分ないんですが、総統候補の親衛隊准将さん…。2mのがっしりした体格は確かにSSにぴったりですよ?でもでも…
もーちょっとイケメンの俳優さんが見つからなかったのー (>ω<)!?
フィンランドなら長身の金髪美形なんかいくらでもいるっしょー!?B級ならここは絶対外しちゃダメーっ(力説)!
…それともあの俳優さんのお顔ってあちらではイケメンの部類なんだろか…(けど金髪じゃないよね)?個人的にものすっごい残念ポイントがここでした…。

ナチ映画のSS=美形。これ鉄則ですヽ(`・ω・´)キラーン!
その一番の好例に私が押したいのは『蜘蛛女のキス』!
あの映画に出てくるSSはほんとに美形俳優さんだったと思ふ…(けどキャッシュを探しても名前を見つけられなかった…回想シーンの端役だから?ううむ残念)。『蜘蛛女~』は美形というのがストーリー上重要だからかもだけど、でも…ねえ()?いかにもな美形俳優だったらもっと盛り上がれたのにな~(※私比較)

 

コメンタリーで監督が「SF映画ではなく、戦争コメディ映画として見て欲しい」てなことを言ってましたが、まさにその通りだと感じました。単純に笑える話を期待するとがっかりするかも。ナチの暴れっぷりより、大団円後の国連の泥仕合の方が黒くて笑えました。

 

そして、何がブラックジョークって…
ナチ演説を披露するホワイトハウスはドイツロケだって事実Σ( ゚ω゚)
これがこの作品の一番の衝撃でした。
NYの街並みとかほとんどドイツで撮影されたとか。お財布事情が理由のようですが、うーん…灰になったヒトラーが知ったらどう感じるんだろ…。

 

…と、ここまで書いてみて気づいたこと。

そっか、この映画ってコメンタリーもかなり面白かったんだ~!DVDでご覧になる方はオーディオコメンタリーも是非お忘れなく!数倍面白くなりますよー。

蛇足ですが。
オーディオコメンタリーがつまんない事もあるんだよね…。
この間見た『スカイキャプテン』はアメコミ苦手な私でも珍しく面白いと思えたのに(映像の色味がぼやーんと滲んでてすごく綺麗!カラー撮影したのを一旦モノクロにして、更に色を付け直したそうですが。このこだわりっぷりは流石オタク 笑)あの色調はCGにしかできないよなー)、…ですがコメンタリーのつまんないことったら (-ω-*)。多分、CG作業ばっかだと語ることってなくなっちゃうのかな?って思いましたです。額に汗した苦労話の前では、パソコン作業の苦労って霞んじゃうのかな、と。

 

 

で。なんとこの映画がたたって監督さんが拉致られてしまったそうで。




作中の「宇宙船はうちの将軍様が作りました(゚ω゚*)ノ!」…国連一同(笑)、というのが災いだったらしく。
アイアンスカイ続編決定だそーですΣ( ゚ω゚)
予告トレーラー(?)監督さんノリノリw(そして痩せればけっこうイケメンぽい)
もうナチじゃないなら続編て言えるんか!?とか、そもそも映画公開まであの体制続いてるんですか?とか、まあ突っ込みどころは満載です(^_^;)私としてはナチの滅びの美学的なロマンがない時点でちょっと…ですけど。現在進行形のネタを扱う難しさとか、絵的な地味さとか、前作よりハードル上がってる気がしますが、一応風刺ネタ山盛りを期待(笑)

例によってカンパ絶賛大募集中らしいので、ご興味おありの方はいかがでしょう?  


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『リヴィッド』(ジュリアン・モーリー、アレクサンドル・バスティロ監督 2011年フランス制作)を見ました。




ホラー映画って自分から積極的に見たりはしないんですが(ホラーは好きなんだけど…ホラー映画ってなんか違うんだよなぁ…)
トレーラーの雰囲気が良い感じだったのでチャレンジ ( ・`ω・´)

フランスのひなびた港町。看護師見習い(?はっきりとは説明されないので今ひとつ謎)のリュシーは先輩の中年女と車で訪問看護に回る。
そのうちの一軒はうっそうとした森の中の廃墟のような屋敷。そこには寝たきりだという老婆がなぜか輸血を施されていた。
「ここには宝があるそうよ。でも私も探したけど見つからないわ」
女の一言は、今の生活にうんざりしていたリュシーの心を惹き付けた。同じように閉塞感を抱える男友達らと、なし崩しに話はまとまり、宝を盗み出そうと屋敷に侵入してしまう。
しかしそこで彼らが見つけたのは老婆の、若くして亡くなった娘のはく製だった    

 

寂しげな海。
左右の眼の色が違うヒロイン。
廃墟同然の屋敷。
ミイラのような老婆。
惨殺される少女。
バレリーナ姿のはく製の娘…。

なんか色々てんこ盛りです(^_^;)
流血スプラッタも大盤振る舞いですが、その一方で映像はフシギと抒情的。娘の部屋でお茶会ポーズしてる動物のはく製とか、ベールを被ったバレリーナの少女たちとか、はく製作りの部屋とか。かと思えば少女も婆様もエンリョなくボコってます(これ、日本だったらNGなんじゃ…(; ゚ ω゚))。
情感を無くすとハリウッドホラーで、情感があるのがフレンチホラーってことでしょーか(ネオフレンチホラーと煽ってますが)
基本の、閉じ込められて「ぎゃー」って展開ではあるんですが、むしろ後半が見どころなのかも。リアル犯罪込み、吸血鬼もの、心霊もの、さらには少女たちの百合っぽいような友情?まで…ほんとにいろいろ入ってます。

監督さん、インタビューで「カテゴライズできないものを作るなと批評家から怒られた」と言ってますが…。
うん…確かに()
でも嫌いじゃないなー。こーゆーの( ´ω`)ていうか好き。作品ジャンルって境界線をきっぱり引かなければならないものなのかなぁ。

ラストに意味不明感はありますが(言いたいことは分かんなくはないけど…。スプラッタ展開からまさかこう締めくくって来るとはビックリ)最後の方の展開はかなり好きです。ただの雰囲気フリだけかと思ってた伏線も一通り回収されてるので、意外と破綻もない()ヘテロクロミア(古いフランスの神話に「二つの魂を持つ」って話があるそうで ※監督談)に、ちゃんとストーリー上の意味あったんだ!って逆に驚いたり(^_^;)

もろ手を挙げて「面白いよ!!」とも言いづらいけど、ストーリー性の濃い、大長編PVみたいだと思いました。もーちょっと流血控え目の方が好みなんだけども(血ぃ出せば怖かろ?って西洋ホラー映画はどうにも違和感が……)
とにかくやたら映像に雰囲気ありまくり。やっぱフランス映画は違うな~。

ところで。
あの屋敷は日本人のイメージするフランスのお屋敷っぽくない…(・ω・。`)
アメリカンスタイルっぽく見えるんだけど。もっとおフランスしたお屋敷にできなかったのかな…惜しい っ(・´ω`・)

 

けどなにより、ベール被ったバレリーナ姿の女の子!

もうそれだけでゴシックホラー!


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『ブリューゲルの動く絵』でシャーロット・ランプリングを見て、なんとなく描きたくなったので(^_^;)
記憶頼みなのでポーズが若干違うかも。

『愛の嵐』(貸してくれたK嬢に感謝♡ しかし原題もですが邦題もあんまりな…)
これってSMの話…というよりはPTSDで壊れちゃったひとの話な気がするんですが。まだ逃亡ナチの話題も生々しい時代にこれを作ったのは、勇気あると思います。
いや、勇気というか…………度胸(;´ω`)?

私的にはSS役の美形度に大いに不満だったので(笑)映画の感想もいまひとつでしたが(ああでも、こんな映画で半端ない美形のSSとかだったら、ナチ賛美とか糾弾されて監督さん本気で殺されてそうだな…)
やっぱりこのシーンは特段鮮烈で背徳的で…イイっす(≧ω≦o)!
シャーロット・ランプリングきれいだし!!
いつだかのタモリ倶楽部の「映画のヌードポーズベストテン」だかの回でも3位くらいにつけてたっけ。


この踊りの直後。
生首を見せられて、一瞬の嬉しそうな顔から嫌悪の表情に変わる…あのサロメ的な彼女の演技が一番印象的でした(〃゚ω゚〃)


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『ブリューゲルの動く絵』(2011年 レフ・マイェフスキ監督 ポーランド・スウェーデン合作)を見ました。


この映画、一言で言えばブリューゲルの絵が動くんです!
……そのまんまやん/(^_^;)!

でも、まあどういったジャンルかと説明も難しく…。タイトルが全てを語っているとしかいいようがなく…。
がっ!
ブリューゲル好き、あの辺りのフランドル絵画好きなら一見の価値は大いにある映画だと思います!

物語は、パトロンである銀行家の求めに応じて、ブリューゲルが世相批判を込めつつ『十字架を担うキリスト』を制作していく過程を丹念に描いていく、というもの。

構図の意図、発想の源…。合間合間に当時のフランドルの音楽や農民の風俗が織り込まれていて、「当時はこんな感じだったのかぁ~」とリアルさに感心しちゃいました(何がリアルっておうちの汚れっぷりとか農民の開けっぴろげな感じが…(´ω`:))。

けど、主題が『十字架を担うキリスト』って知らずに見たので、途中まで状況が理解できなかった私((((;´・ω・`)
だって台詞が入るのすら始まって30分近く経ってから(!)
台詞で説明しきっちゃうのもどうかとは思うけど、ちょっと…かなり観客を突き放した作りです。全編において台詞はものすっごく少ないです。「このニコラス・ケイジ的な黒服のおっさんだれ?」とか…おっさんがユダだって分かるまでの道のりの遠いこと(笑)

私のブリューゲルのイメージは『ネーデルラントの諺』や『怠け者の天国』なんかの割と牧歌的な「農民画家」でした。なのでこの映画で「ブリューゲルって結構血生臭い時代の人だったのか~!」とちょっと開眼(や、ほんとに何にも知らなかったので…ヘリウム入りのオツムの哀しさ (。-ω-)あ、ヘリウムも今や貴重なんだっけw)
ブリューゲルの生きた16世紀前半は彼のルターの宗教改革真っ盛りな時代だったんですね。
で、発祥のご近所ってことで(?)フランドルはプロテスタント。なのに統治者のハプスブルクが分裂して、ネーデルラントはスペイン(イスパニア)ハプスブルクのカール5世の統治下に。こっちはばりばりのカトリックだったので、ネーデルラントでは異端への見せしめ処刑が日常になってしまいます。

そう知るとブリューゲルの絵の見方も重くなるなぁ…。

映画では、このカール五世下のスペイン騎兵(赤い軍服が鮮烈で印象的)のプロテスタント狩りの残虐さが一番のドラマです。
捕えられたプロテスタントがキリスト磔刑になぞらえて処刑される様。それを「時代をフランドルに移した『十字架を担うキリスト』」としてブリューゲルが画布に封じ込めるのです。
とはいえ、映画では宗教改革とか当時のヨーロッパ政治についての説明も少なく…。
キリスト教を全然知らないとかなり厳しい映画です(-_-;)
予備知識があっても、ドラマらしいドラマがあるわけではないので、気力と集中力が充実してないと意識が飛ぶ恐れあり(笑)
睡眠不足の時には見ない方が賢明です (_ω_)

一番「おお~!」と感動したのは、絵では小さく描かれた「岩山の上の風車小屋」。
映画のブリューゲルはこれを「全てを見下ろす神の目」だと説明していますが、この内部のセットが圧巻です!絵では当然内部なんて描かれていませんが、大きな歯車、洞窟を上へ上へと這うように続く長い階段(これCG?セット?すごいリアリティ…!)だけでもう圧倒されます。
このシーンだけで見た甲斐があったかな、と。

もう一つは役者のいぶし銀な豪華さ!
ブリューゲル役のルドガー・ハウアーは『ブレードランナー』でレプリカント役だった人だと後で知り「おお~!」。
そしてマリア役はシャーロット・ランプリング
『地獄に墜ちた勇者ども』に、そう!『愛の嵐』ですよ(〃゚ω゚〃)!!ハスキーな声はそのまま、自然に美しく年とってます。

あの『愛の嵐』の女優さんが、と思うとなんか感慨深かった…。

で、「これだけ当時の習俗を描き込んでるのに英語ってのがなぁ…せめて現代オランダ語だったらもっと雰囲気出たんじゃ」と若干がっかりしてたんですが(いやどっちもわかんないけど。雰囲気雰囲気(^_^;))。

…えーとナニなに?

フランドルは「オランダ南部ベルギー西部フランス北部にかけての地域」!?
で、ネーデルラントというのが今でもオランダの正しい呼び方Σ( >゚ω゚) !?
ネーデルラントってオランダの古名だと…恥。だってだって英語でもHollandって…俗称だとぅ!?
…知らんかった…っ。
なので、何語にするかはかなり難しい、と。更にスタッフの国籍も見事にばらばらなので、英語圏の作品でもないのに英語作品なわけですね。
ううむ、複雑…。







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『神々と男たち』(グザヴィエ・ボーヴォワ監督 2010年フランス制作)を見ました。

2010年のカンヌの審査員特別グランプリ受賞作品です。

とはいえ「カンヌ受賞!」のあおりに釣られると泣きを見ることもあるので(li-ω´-)あんまり期待しないよーにしよー…(笑)と思ったら、いやいや!すっごくツボでした。非常に美しい映画です!

 

1996年、アルジェリアで実際に起きたフランス人修道士にまつわる事件の映画化だそうで。
ですが、いきなりタイトルの「神々」でつまずく私 (・´ω`・)

キリスト教、つまり一神教なのになんで複数なん??と思って確認したら、誤訳ではなく原題ママ(DES HOMMES ET DES DIEX)らしく…。その理由は映画の冒頭でも提示されてたようですが…見てなかった…ていうか、なんかよくわかんなかった…(えーと、教義上の解釈でなんたらかんたらと~)ちゃんと意味があるっぽいので気になる人は各自ご確認を。私のヘリウム入りのオツムでは説明できましぇん(ノω・`o)キリスト教、難ちいよぅ…。

 

それはともかく。

映画自体は素晴らしく美しいです!ネタ的には社会派ドラマのくくりなのかも知れませんが、これは恋愛映画だ!と思いました。神への、です。

 

1996年、アルジェリアの片田舎の村にあるカトリック修道院。

フランスから派遣された修道士たちは、貧しい村人に無料で医療、書類の代筆、時には裸足の子供に靴を提供するなどキリストの教えを実践。長年の無私の奉仕活動は、イスラム教徒の村人の厚い信頼を得るようになっていた。しかし、アルジェリア国内ではイスラム原理主義「ジャマ・イスラミア」が台頭。日々強まるテロの脅威。流血と硝煙は日常の風景になっていた。やがて穏やかな村と修道院にも不穏な風が押し寄せる。
原理主義者にとって、フランス人修道士の存在は宗教的に対立するのみならず、かつての宗主国、今の貧困と混乱の元凶なのだ。いつ襲撃され、殺されても不思議はない。修道士たちのフランス本国の身内は彼らの身を案じ、しきりに帰国を促す。だが、村人たちは帰らないでくれと懇願する。村人にとって彼ら修道士は無くてはならない存在になっていたのだ。隣人を愛せよと言ったキリストの教えに殉じるのか、それとも命を惜しんで帰国するのか。修道士たちは迷い悩む。

そんなある日、クリスマスの夜。つましくキリストの生誕を祝う修道院に、原理主義者の集団が押し入って来て…。

 

元ネタの事件を知らなかったので、「ああ!早々に押し込んできちゃったよ~。もう流血展開?籠城監禁?」と冒頭からハラハラしちゃったんですが、映画の主題はそこではなかったようで。修道院に押し込んできた男たち(いかにも山賊、強盗風)の「教皇を出せ!教皇はどこだ!」の台詞に(ああ、ほんとに何も分かってないんだ…だめだ撃たれる~)と思いきや、修道院の代表のクリスチャン(ランベール・ウィルソン)が敢然かつ冷静に受け答えし、窮地を切り抜けます。実は彼らは怪我人の治療を求めてきただけ。
怪我人の居場所は遠過ぎて、医者の老修道士はとても同行できないとクリスチャンが説明すると、原理主義者のボスは意外にも理解を示して撤収します。更に、クリスチャンが別れ際「今夜は我々の神の子が生まれたお祝いだったんだ」と言うと、「それは悪かった」と謝罪までします。
テロリストと言っても分別のある人はいるんだな~、と変なところで感心。イスラム教から見てもイエスは預言者ではあるので、まあ当たり前といや当たり前なんですが(^_^;)けれど一触即発の事態だったのは事実。この夜以降、修道士たちは留まるのか帰国するのか、いよいよ決断を迫られます。

一番意外だったのは、修道士たちは必ずしも殉教を是と考えていないということ。
日本人から見るとキリシタン弾圧とか、殉教大絶賛!って感覚かと思ってたんですが(昔の宗教絵画、殉教した聖人の絵なんて必ず死因の拷問器具が添えられるし。あの感覚は相当シュールだと思う…)現代ゆえなのかフランス人ゆえなのか、彼らは生きることを第一に考えます。もうお迎えが近そうなお爺ちゃんさえ同じです。十人前後?の修道院のメンバーはお爺ちゃん率が相当高いんですが、それでも「老い先短い身だから死んで本望」とか言うような人はいません。

「帰りたい」「でも村人を裏切るのってどうよ」「どうしよう」
と三々五々意見の纏まらない修道士たちを前に、リーダーのクリスチャンの苦悩は深まります。何が悩みって、自分たちを慕い引き留めようとする村人はイスラム教徒。カトリックに帰依してはいないのです。はっきりとは描かれてませんが、おそらく修道院は植民地時代からのもののはず。少なくとも半世紀以上は経つのに、誰一人改宗していない。布教が目的のはずならどう見ても失敗です。
こっちから見ると村人の感覚って「タダで治療とかしてくれちゃう便利なお隣さん」にしか見えないわけですが…実際どうだったんだろう… 都合いいな~、って思っちゃったんだけど…(・´ω`・)カトリック信徒が引き留めるならともかく、これではクリスチャンも悩むはずです。

修道院の経営は苦しく、しかも外出も恐る恐るという中、薬も食糧も不足がちに。安全面からも生活面からも進退の決断を迫られるリーダー、クリスチャン。彼は神に祈ります。その祈りは賛美歌となり、静かなアルジェリアの景色に重なります。この折々に挟まれる賛美歌が実に清らかです。これ、ほんものの修道士の歌声?吹き替え?プロ並みの上手さにびっくり。修道院の賛美歌ってこのくらいは普通なんでしょうか。そしてアルジェリアの乾燥した風景。それは修道士たちの母国フランスより、はるかにイエスの見た風景に近いはず。そこをさ迷うように散策する姿は、無言でも苦悩が伝わります。

しかし、神は答えません。

沈黙。

 

神の沈黙に、修道士たちは悩みながらも決断します。

 


この沈黙する神への修道士たちの感情が、「これって片思いそのものじゃん!」って感じなんです。
神が振り向かなくてもただ一心に、熱烈に想いを募らせる修道士。イエス・キリストの絵にキスするお爺ちゃん修道士のシーンなんか、ドキドキものでした。信仰の話…のはずなんですが、この恋愛の匂いは何なんだろ (^_^;)意図的な演出なのかな?とも思ったんですが、そういえばこれはフランス映画。はっ、だから!?フランス映画はどんな主題でも、えろーすな感じになっちゃうとか!?ど、どーなんだろー… (*´ω`*)でもそこが出色だったと思います。宗教や政治がよく分かんなくても感情移入できるのではないでしょうか。

 

ややネタバレですが、終盤、修道士たちの晩餐でベートーベンの交響曲第七番三楽章(多分;)が流れるシーンは本当に感動ものでした。役者さんたちの何とも言い難い、達観した表情も堪りません。
久しぶりに泣きました…。

 

全体的に質素で、重苦しい話ではありますが、「いい映画」です。ラストの雪景色は心にせつなく残り続けます。事件の真相は解明されていないことも多いそうなので、ラストは憶測かもしれません。それでも説得力がありました。設定も、話の終わり方もまるで違いますが『バベットの晩餐』を思い出しました。空気感というか、心への残り方が近い気がします。
あー、いい映画見ちゃったなー。  

 

 ところで。

この映画を観て上記↑の感想を書いたのは実は割と前で、アップし損ねている内に先日のアルジェリアのガスプラント事件が起きました。救出された方の一人はベッドの下に隠れて助かった、というのを聞いてまず思い出したのがこの映画でした。映画でも修道士の一人はベッドの下に隠れて命拾いしています。この映画と先日の事件とではケースは違いますが、15年以上経ってもいまだアルジェリアの治安状況は変わらないという事実には暗澹とするばかりです。どうすればこの国が、地域が平和になるのか、根本にあるものがあまりに深すぎて軽々には考えられません。それでも「普通」のひとが「普通」に暮らす権利は絶対のはずです。『神々と男たち』の修道士たちも普通のひとです。

ほんとうに、人ってなぜ争うんでしょうね…。




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『宇宙人ポール』(グレッグ・モットーラ監督 2010年アメリカ・イギリス合作)を見ました。
もっとB級B級した映画かと思ってましたが、ややや!B級も煮つめれば良作になっちゃうんですね。すっごく、面白かったです (〃゚ω゚〃)!


どうみてもぱっとしない、オタクの見本のようなグレアムとクライブはイギリス人で仲のいいSF作家とその挿絵画家。
アメリカのコミコン(米国版コミケというか。コミケよりもっと商業色が強い感じ)ついでに憧れのロズウェル名所巡り(笑)で米国観光を満喫していたが、そのロズウェルでまさかの「本物」宇宙人に遭遇してしまう。「ポール」と名乗るその宇宙人は、噂のエリア51からまさに脱走中と言い、捕まれば自分は殺されてしまうのだと二人に逃亡の手助けを頼みこむ。
こうして話は仕方なくの巻き込まれ型ロードムービーに。
追手はお約束のCIA風黒服の上司に、任務が宇宙人追跡とは知らされない部下二人(但しおマヌケ)。逃避行中に出会った進化論全否定の超保守派キリスト教徒(アメリカだなぁ)の女性をも道連れに、一同はポールの目的地へと向かうのだが…。


ストーリー自体はシンプル、王道ですが、小ネタがいちいち凝ってます。
宇宙人ものの映画ってメジャーどころくらいしか見てませんが、それでも「ああぁ~」と微笑しちゃうパロディの数々。ラスボスに至っては、やっぱこの人なんだ!ともはや感動モノでした(ネタバレなので伏せますが、よく出演OKしたものだと。 笑)私ですら笑える小ネタが一杯だったので、SFマニアならツボの嵐なのでは…。
英米合作故なのか、アメリカン度も濃厚です。
特に超保守派キリスト教の彼女がポールを見て恐怖のあまり讃美歌を絶唱し始めるとか「ああ~、実際いそう~~」って感じです。あと、キャンピングカー専用の宿(モーテルというか…キャンプ場みたいな?)これは日本じゃありえないなぁ、と妙なところで感心。それから主人公二人が事あるごとにホモ疑惑を掛けられてるのが何とも…。ポールにまで突っ込まれてるし(笑)。アメリカでは男二人連れってだけでそう見られるものなのか、それともこの二人がホモホモしく見えたから?日本じゃここまでロコツに怪しまれないと思うんだけどなあ。ちょっと謎でした(;´ω`)

でも、細部の笑えるポイントも良かったですが、ちゃんと感動ポイントも抑えてて、そこが何よりも良かったです。
「ポール」の名前の由来はと言えば、実は宇宙船が墜落するときに巻き添えで死なせてしまった犬の名前。冒頭でそう説明が出て「えええー!わんこ酷いー!!」と思ったら、ちゃんと伏線になってて素敵なラストへと繋がります。ちょっとじわっとしちゃいました。いい話なのでこの辺は是非映画で是非♡最後の最後でのどんでん返しにも余念がありません。

そして私はCGってどこまでも作りもの感がしてあんまり好きじゃないんですが、このポールのヴィジュアルは別格!特に眼差しが!造形的には典型的グレイなんですが、妙~にかわゆい!性格は下ネタ好きの口の悪いオヤヂそのものなのに、瞳がまるで子犬のよう …(〃゚ω゚〃)実に表情豊かです。この映画で感動できたのはこの眼差しのせいかと。担当したひと、うっまいなぁ~。


丁度この映画を観る前に『エリア51~世界でもっとも有名な秘密基地の真実~』という本を読んだとこでした。…なので余計に、ファンタジーはやっぱりハッピーエンドに限るな~、と。

下ネタ満載なので、お子様にはアレな映画ですが(; ゚ ω゚)大人の良質なファンタジー映画ですよー。

拍手[2回]

『ヒトラーの贋札』(ステファン・ルツォヴィッキー監督、2006年 ドイツ・オーストリア合作)を見ました。

これも邦題に「とりあえずヒトラーって入れちゃえ」なパターンですね。原題は『贋作者』。まあ確かに原題ママじゃ弱いかもですが、この「とりあえずヒトラー」系ってどうにかなんないのかなぁ… (´-ω-`)
アカデミー外国語賞を取った由緒正しい作品ですが(笑)当時目にした映画評が今ひとつだったためなんとなく手が出なく…でも遂に見ちゃいました。



なぜなら…そう、マイブームのアウグスト・ディールさんが出ているから!!でへ (〃>ω<〃)
 
1930年代後半、いかがわしい酒場を切り盛りするザロモン(カール・マルコヴィックス)はサリーという通称でユダヤ人という出自を隠しつつ、裏で画才を生かした偽造身分証作りに精を出していた。しかし運は尽き、親衛隊に逮捕され、強制収容所に送られてしまう。
だが要領のいいサリーは収容所でも画才を生かして生き延びていた。
時は経ち、大戦末期。サリーは理由も分からず別の収容所に送致される。そこに集められた囚人たちには地獄の環境から一転、清潔なベッドとまともな待遇が待っていた。
なぜ?
それは特別かつ極秘の強制労働、米英の通貨を偽造し敵国の経済を混乱させる『ベルンハルト作戦』に従事させるためだった。まず第一目標にポンド紙幣の偽造。そして最終目的はドル紙幣の偽造。
「プロ」のサリーの腕を持ってすれば出来ない仕事ではなかった。しかし偽造紙幣が出回れば戦争の終結は遠くなる。万が一にもナチスドイツが勝てばサリーたち囚人の未来はない。が、作戦が遂行出来なければ地獄の収容所か、死が待っている。
紙幣を作るのか、作らないのか。
そこに異分子がひとり。アウシュビッツに妻を残し、一人だけ移送されたというブルガー(アウグスト・ディール)は共産主義者で、ビラを印刷したために逮捕されたという経歴の持ち主。彼は「自分たちさえ助かれば他の多くの人間が死ぬことになってもいいのか」と作業を妨害する。
ブルガーのあからさまなサボタージュは仲間の囚人の命を脅かすものだ。かといってサリーには、そんなブルガーを批判する気にもなれず……。
 
私的メインのアウグストさんは囚人役なので、正直イケメンシーンは今回カケラもありません (´・ω・`)ちょっとはましな古着も「他の死体からはぎ取った服なんか着られない」とひとりだけボロ縞囚人服で通してます。

そして、役柄も…うざいです。このブルガーってひとは。言ってることは正義そのものなんですが、この極限下で、仲間まるごと死ぬ羽目になっても構わない!って言い切っちゃう人間て…。周囲からしたら、そりゃあこっそり始末しちゃいたくもなるでしょう。カタチは正義漢ですが、アウシュビッツで奥さんを銃殺されてしまった故の自暴自棄です。姿を変えた自殺願望にしか見えません。気持ちは分かりますが(自分は死んでも本望だろうけど、仲間の命はまた別だろうよ…)と、見てるこっちもストレスたまる感じ。
ああうざい!うざ過ぎる…!と思ってたら、このブルガーと言う人の書いた本が映画の元ネタだそうで。
主役の方じゃなかったんだ!とかなり意外でした。この「実話ベース映画」ってのも、どこまで事実なのかといっつも悩むとこですが、このお話はどこまでどうなんでしょうか…。『ベルンハルト作戦』自体は事実として、ブルガーさんはいい人ポジションなのか、私が感じた通りのうざいひとなのか…。本の方は未見なので分かりませんが、多分後者なんじゃないかと勝手に断定しちゃいます。作中でも「自分は倉庫で食糧をくすねて生き延びて…」と告白しているし、100パーセントの正義漢じゃ戦後まで生き残るのは至難の業でしょう。
何より断定したいのはアウグスト・ディールの演技力のせい!私は『九日目』のカッコイイ将校姿ですっかりはまったわけですが、…このひと、本当に演技が上手い…!屈折した心理描写が伝わってきます。ラストの、全てが終わり状況が反転した時のアップの表情はなんとも言えません。彼の表情が映画の全てを語っているようでした。
「正義とは何だ?」と。
ブルガーはうざい人ですが、彼は彼なりにうざくならざるを得ない理由があるわけで。この人がただの正義漢ヒーローだったら、もっと単調な映画になってしまったんじゃないでしょうか。アウグストさん、今回はビジュアル面での良いところはゼロですが、表情には惹き込まれます。

ん?…ていうと『九日目』でかっこいいと思ったのも、演技力&目力に負うところが大きかったのかな~??
 
映画そのものは「良い映画か?」と聞かれたら「ううう~~~~んん」って感じでしょうか… ( ´・ω・`)
駄作でもなく、つまらなくもないんですが…とにかく「疲れる映画」と言いたいです。エンドロールをぼ~っと放心して見ていたくらいなので。勧善懲悪は問題外としても、救いもなく、ハッピーエンドらしいハッピーエンドもありません。人が、それぞれ必死に生き残ろうとする様だけが描かれているので、感想はただ「正義とは何ぞや?」としか言いようのない映画です。救いと言えば、主役のカール・マルコヴィックスの淡々とした虚無感漂う演技でしょうか。彼もまた善人とも悪人ともつかないために作中人物の中で公平(?)で、それがまあある意味救いというか…。ううむ。
疲れている時に見る事は激しくおススメしませんが、アウグスト・ディールの演技が出色なのでそこだけはおススメしたいです。

イラストは、お話に直接噛んでは来ませんがブルガーが共産主義者ということで赤いカンジに。
とことんアウグスト・ディールお目当てなので、映画のイメージとは違うシロモノになってます(笑)
 
あと本筋と直接関係はないですが、…ポンド紙幣が片面印刷だったのに愕然。
小切手かΣ(゚д゚lll)!?
ドルは両面印刷だったので、その点だけでも当時のイギリスの苦境が忍ばれます。

みんな苦しい時代だったんですね…。

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映画『9日目 ~ヒトラーに捧げる祈り~』(2004年 ドイツ、ルクセンブルク、チェコ合作。 フォルカー・シュレンドルフ監督 日本未公開)をDVDで見ました。



あまり予備知識もなく「あ、ナチものなら見とこっかな」くらいの気持ちで借りたんですが、当たりました (〃゚ω゚〃)!
私的にこれは今年一番の当たり映画です!きらーん。
あ、でも副題はいかーん。原題通りの「九日目」だけじゃ弱いのは分かるけど、せめて「ナチに捧げる…」程度でしょ?
ヒトラーの名前はかろうじて出ても敬礼くらいだし….。



物語は収容所から始まります。とにかく事前知識がなかったので「囚人のお祈りはこれ、何語??イディッシュ語ってやつ?でもこれってキリスト教の儀式のような…?」映画の収容所=ユダヤ人収容所と思い込んでいたので、いきなり頭が疑問符だらけになりますが、話が進むにつれ、状況が判然としていきます(お祈りはラテン語だったんですね)。

場所は後に悪名を轟かすポーランドのダッハウ収容所(時代は「ハイドリヒが…」とか言ってるので40年代頭?)そこには「司祭区域」、カトリックの神父だけを集めた棟があった。ナチに反抗的とされた神父の収容棟だ。神父たちはユダヤ人と変わらない、あるいはそれ以上の過酷な環境におかれていた。そこは正に生き地獄だった。

囚人のひとり、ルクセンブルク人のクレーマー神父(ウルリッヒ・マテス)はなぜかある日突然釈放される。「この金があればルクセンブルクまで帰れるか?」看守の将校から夢のような言葉を掛けられ、何がどうなってるのかも分からず神父は家路に着く。が、案の定、帰路途中でゲシュタポに呼び止められる。しかしゲシュタポは、神父を妹の引っ越し先まで車で送ってくれるだけだった。ただ一言を残して。「明日ゲシュタポ本部に出頭するように」

逃げるわけにも行かず大人しく出頭すると、私服の親衛隊将校、ゲプハルト少尉(アウグスト・ディール)が紳士的に出迎えた。意外な出来事の連続に怯え戸惑う神父だったが、彼の心を見透かすように少尉は告げる。

「貴方がナチの指示に従わなければ、この釈放は取り消され、九日後に収容所に逆戻りになる。
逃亡を図れば、収容所の仲間の神父全員が処刑される」


ナチの目的は、反ナチ姿勢を崩さないルクセンブルク司教を懐柔すること。
だからこそ、良家の出身で司教に近しいクレーマー神父に仲介役の白羽の矢を立てたのだ。しかし、親しいからこそ司教の決意の固さを神父はよく知っていた。それ以上に彼自身もパリでレジスタンスをしていた身。到底受け入れられる話ではない。かといってあの地獄に戻ることなど考えられない。
自分の命、弟妹達親族の運命、仲間の命、カトリックとルクセンブルクの未来を思って神父は悩む。
一日、二日、三日…。

一方、神父の運命を握るかに見えたゲプハルト少尉だが、彼の運命もまた神父に懸かっていた。神父が否と言えば、少尉は「よく知っている」収容所勤務に左遷されるのだ。


見どころは、話が進むにつれ神学校出だと判明する少尉と神父の討論です。自分がユダになるのは耐えられないと苦悩する神父。ユダは決して裏切り者ではないと神父を説得する少尉。

ユダは裏切り者なのか?イエスを売ることでイエスの予言を成就させたユダこそが、キリスト教の真の創設者ではないのか?
迷う神父と迷わないナチ将校。この対比がとてもいい!

しかも、何が良いって

少尉役のアウグスト・ディールが………超イケメンーーー!

好み過ぎです。ヤバいです。きゃーーーーーーーーーー (≧ω≦o)!!
こーゆークールビューティーな将校が理想だっ(何が?)


顔も素晴らしいですが(笑)演技も素晴らしい!
当初は余裕たっぷりで寛容さを見せる少尉の、一転してゲシュタポの残忍さや高圧的な一面。時間の経過と共に焦り出し、神父によって追い詰められていくその表情には惹き込まれます。

「収容所で何を見た(した)?」

クライマックスの神父の問い掛けにキレる顔は、特にいい!思わずリプレイです!

少尉役が彼じゃなかったら相当地味な映画ですよ、これ(私の萌えバイアスのせいぢゃないハズさ!)。主役は神父ですが、少尉の方が背景は複雑で(建前上キリスト教を否定するナチに志願する神学生って多かったんでしょうか)、かなり美味しい役かと。
この映画は実話ベースだそうで、まあお話的に神父の結論は想像つくけど、気になるのは少尉のその後だよぅ(ノω≦`)ノゲシュタポなんかやってるけど、ほんとはきっと善人なんだよこの人!
ああっ、少尉のその後が気になる~。

対話劇な映画なので映像的な派手さはないですが(私は俳優さんの美貌で派手ポイント満点ですが)地味ながら光った佳作だと思います。日本で公開されなかったのは本当に惜しい!DVDが出るだけ良かったけど。
ルクセンブルクという、あまり馴染みのない国の映画というのも注目です(ルクセンブルクってドイツ語とフランス語のハイブリッドだと思ってたら、ルクセンブルク語があるんだ…。初めて知った…恥)


もう一度戻って、美形俳優アウグスト・ディールさんのお話 (〃゚ω゚〃)

惜しいのは少尉がずっと私服スーツなところ。
威圧感を与えないための彼の作戦の一つかもですが、でもっ!制服を!制服姿が拝みたい…っ!!(スーツ姿も似合ってますが。ていうかどこのブランドのモデルですかっちゅーくらい。座って足を組んでるだけで、絵になり過ぎでしょー!1940年代のスーツもいいな~。)とシリアスな映画を見ながらヨコシマに悶々してたら、終盤では制服姿を披露してくれました。
フィールドグレーの野戦服だけどさ… (´・ω・)それもいいけど黒勤務服…黒服を…っ!

と、悶えていたら。なになに?

『イングロリアス・バスターズ』に親衛隊のヘルシュトローム少佐役で出ている!?
こっちは黒服だとぅ!?『イングロリアス~』見たけど…(感想は…ハリウッドだしね…。タラちゃんだしね…。…それでも言いたいっ。他の全てに目を瞑っても、あのパラレル落ちはあんまりだよ!タラちゃん!)
あ!そうか、こーゆー美形にこそSS黒服が似合うんだー!って喜んでたらあっさり殺されちゃった人か!私、彼に大佐をやって欲しいと思った気がする…。年齢的に大佐は無理だったか?
あああ、もう一回見るべき?オチまで見なければいいのか?ううう~ん。


アウグストさんばっかりなのもアレなので、主役のウルリッヒ・マテスも少し。

「すごい頬のこけっぷりだ~。収容所な感じを出すためにどんだけ減量したんだろ…」と尊敬して調べたら、この俳優さん『ヒトラー最期の12日間』でゲッベルスをやってたんですね。そっか!「なんかすごい異相のゲッベルスだ…!」と容貌ばかりに目がいっちゃったあの人だったんだ。つうと、つまり元々こーゆー顔の人なのか…。…。
神父姿がなんかホラーに見えたのは、俳優さんのせいじゃなくてエクソシストの刷り込みのせいだよね、きっと… (・´ω`・)。


イラストは、欲求不満から勝手に捏造しちゃったゲプハルト少尉黒勤務服バージョン。あんま似てませんが。
ちゃんと麗しいアウグスト・ディールを確認したい方は是非レンタルを!是非是非♡


…『イングロリアス・バスターズ』もう一回見るべきかな……ううう~~。

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映画『ミケランジジェロの暗号』(ヴォルフガング・ムルンベルガー監督、2010年オーストリア制作)をDVDで見ました。
この映画、物語の主題がSS制服だというので、映画公開時からすっごく気にはなっていたものの、ミニシアターまで行きたしと思えどもミニシアターはあまりに遠し…(T_T)やっと待ち望んだDVD!そういえばオーストリア映画というのも初観賞。



物語の始まりは1938年、ナチスドイツ併合前夜のオートリア。
世間はまだナチの真の恐怖を知らず、裕福な画商の息子でユダヤ人のヴィクトル(モーリッツ・ブライプトロイ)も、日々強まるユダヤ人蔑視を苦々しく思いつつも、まだ状況を楽観視していた。そんなある日、使用人の息子だが幼馴染みで親友のルドルフ(ゲオルク・フリードリヒ)が数年ぶりに帰郷する。再会を素直に感激するヴィクトル。
同じころ、父の画商カウフマンは、ミケランジェロの幻の素描「角の生えたモーセ」を秘かに入手したのではないかと絵画好きの間で話題になっていた。かの絵は、400年前にバチカンから盗み出されて以降行方不明という、いわくつきの絵。カウフマンは所有を否定する。だがヴィクトルは、父が極秘にしていた存在を、懇願に負けてルドルフに見せてしまう。
「親友だから」
しかしその信頼はいともあっさり裏切られてしまう。ルドルフは素描を渇望するナチに、親衛隊伍長の地位と引き換えに「親友」を売ってしまう。ヴィクトルには親友でも、ルドルフは「所詮雇用主のぼんぼん」と複雑な感情を抱き続けていたのだ。ルドルフはスイスへの旅行(亡命)許可証との引き換えという、「温情」交換条件で絵を奪ったつもりだったが、ナチスはこれ幸いと一家を収容所へ移送してしまう。

時は過ぎて1943年。ナチスドイツはムッソリーニをドイツに招待、同盟の記念としてミケランジェロを贈ろうとしていた。だが事前調整会議のただ中、素描が贋作だと発覚する。ヴィクトルにも教えずに秘かに父がすり替えていたのだ。
「ミケランジェロが無いならこの話も無かったことになる」
限られた時間内に本物を入手せねばならない。是が非でも!功労者が一転、首の皮一枚となったルドルフ(素描入手で今は大尉)と上司は血眼になる。
「父親は収容所で死んだが、息子は生きている。奴なら絶対絵の在り処を知っているはず」

数年ぶりに二人は再会する。SS大尉とボロ服の収容所の奴隷…。二人の立場は逆転していた。贋作の存在も、まして本物の所在など知るよしもないヴィクトル。だが、まだ生きている母を救うため賭けに出る。「本物はスイスにある。自分と母が出向いてサインしなければ銀行は鍵を開けない」渋々ナチは、ヴィクトルとルドルフを飛行機でスイスに向かわせる。
だが途中、パルチザンの銃撃に会い飛行機は墜落。奇蹟的に助かった二人だったがそこはパルチザンの巣。見つかれば親衛隊は即銃殺される。足を負傷し身動きが取れないルドルフを救うため、ヴィクトルは服を交換してルドルフを守ろうとした。しかし、隠れ家になだれ込んできたのは二人を救出するために派遣された親衛隊だった。「御無事ですか、大尉殿!」彼らが声を掛けたのは、親衛隊の制服を着たヴィクトルの方で……。

…実は見始めてからすぐがっかりしたのです。制服がテーマと期待してたのに…
……あかん、どうしよう……主人公の顔が全く好みぢゃない…… (´TωT`;)…好きな人ごめんなさい…。

そんなしょんぼり気分のせいか、途中までの展開は正直なんか地味です。
がっ!ユダヤ人とSS将校、立場が反転してから俄然物語は面白くなります。本物のユダヤ人の見分け方や、身分を隠し、あるいは身分を明かそうとする必死さは、スリリングでありながらコントすれすれ。この妙なおかしさは一体?『アンダーグラウンド』の笑いの感覚に近いものを感じます。話は二転三転。身分がばれても立場は逆転し、二人はどうなるのか、ヴィクトルのお母さんは無事逃げ切れるのか、そして絵はどこに…。
ぶっちゃけ絵の在り処は中盤ですぐ分かっちゃいますが(あれは普通気付くよね…?^_^;)それでも物語の魅力なのか、最後まで一気に見ちゃえます。オチは物足りない気もしますが、当時の実態は案外そんなものだったのかもしれません(情状酌量事由があってもSS将校なら何らかの処罰は免れないんじゃないの??って思ったんですが)勧善懲悪が好きなわけじゃないけど、ルドルフ君、少しは反省してほしい…。
ミステリーとしても面白いですが、メインは人間心理の映画だと思います。親友同士の権力による立場逆転は『善き人』の逆バージョンでもあるかと。
見事なまでに美形が出ない映画ですが(あ、でもパパカウフマンは見方によっては腹黒い役なのに、かわいいおっちゃんで良かった!)ミケランジェロを引き立てるための演出なんだと深読みすることにします(笑)
ナチSSモノが好きな人にはオススメ!です。まあ、タイトルは某作品に乗っかり過ぎな気もしますけど (-_-;)


で、映画とは別に気になったのが、物語の鍵『角の生えたモーセ』。
作中でもお母さんが「不吉」だと言ってますが、なぜ角が生えてるの?ユダヤ人への差別表現?と思ってちょっと調べてみたら、
「ミケランジェロが手にした当時の聖書が、ヘブライ語の「光」を誤訳して「角」にしちゃった」
え~~~~~~。
そしてややこしいことに、昔はキリスト教圏でも角を力の象徴と捉え、必ずしも悪魔的イメージではなかった…とか。日本でも角大師とか、そんな感じ?キリスト教で角と言ったらイコール悪魔だと思ってたのでちょっと意外でした。もののイメージは万国共通ってことでしょうか。

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映画『シャンハイ』(2010年アメリカ制作)をDVDで見ました。
1941年という設定につられて…いや魅かれて借りたんですが、良かったです…!!

何がって、もう、謙さんが!!!


1941年、太平洋戦争開戦前夜の上海。米国諜報部員のポール(ジョン・キューザック)は同僚でもある友の謎の死の真相を暴くべく、新聞記者として上海に上陸する。そこはドイツと日本が時勢を謳歌する、無国籍にして無法地帯の魔都だった。ポールは友の足取りを辿る中、日本軍と国民政府の両方に通じる三合会のボス(チョウ・ユンファ)とその魅惑的な妻(コン・リー)、そして日本軍情報部のタナカ大佐(渡辺謙)と出会う。いずれもそれぞれ腹に一物抱えた謎めいた人物。彼らを探って行くうち、友には一人の日本人の愛人がいたことを突き止める。だが彼女は行方不明だった。そしてタナカ大佐もなぜか彼女の行方を探索していて……。

そう、この映画の全ては謙さんの魅力です。
タナカ大佐がっっ、きゃ…
きゃっこいい~~~~~( (,,>ω<,,)ノノ!!!
基本日本軍萌えはないんですが…。マントを翻して振り返る謙さんがっ!ほほ笑みながら紳士的に拷問してる謙さん(笑)がっ!か、かっこ良すぎる!!なんかこの渡辺謙大佐を見てると、日本軍の軍服もカッコ良く見えてくるからフシギ。謙さん、目力がやっぱりすごい。凄すぎです。物語的にもタナカ大佐は冷酷一辺倒ではないのが何よりいいです。ネタばれなので伏せますが、ラストのシーンの数々は謙さんが主役としか言いようがありません。冷酷だと思っていた日本軍将校の情愛の深さとか、アメリカ映画ということを考えればかなりの出色の展開ではないでしょうか。
闇社会のドン役のチョウ・ユンファもクライマックスで謙さんに拮抗します。椅子に座りっぱなしのヤクザのドン…と見せかけて射撃の達人、そして奥さんへの深い愛…こっちも渋いです。
で、その二人に挟まれてしまった主役はといえば…可哀そうなほど霞んでます(-_-;)ただの狂言回しにしか見えないよう…。ドンの妻のコン・リーも、う~ん…。旦那さん、「他の男が見てるだけで許せなかった」とか言ってる割になぜあんな露出しまくりのドレスを着せているんだ??そしてポールにくらっときちゃうのも、ううむ、分からん…。まあ、時代考証もいい加減という噂もあるので、そのくらいは、まあ…。アメリカ映画だし…。
とはいえ上海租界のセットは素晴らしいです。これ、すぐ壊しちゃったんでしょうか。もったいない~。

でも、兎にも角にもこの映画は渡辺謙です!謙さん好きなら必見。そうでない方にも、この謙さんの「きゃああー(( (o>ω<)ノノ☆!」な渋さを是非!!

イラストは、描いてみたかったから描いたんですが…違うっ!謙さんの魅力はこんなヘタレ絵では全然表現できてないと猛省…。
それでも一応頑張って描いたので、往生際悪くアップしてみました。

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映画『エリート養成機関ナポラ』(デニス・ガンゼル監督、2004年ドイツ制作)をDVDで見ました。
他のDVDの新作紹介で初めて知って「おお!?」と思わず借りちゃったのですが…私的には大当たり(〃゚ω゚〃)


1942年、欧州征服の夢も綻び始めつつあるナチスドイツ。
父の小さな工場に勤めるフリードリヒ(マックス・リーメルト)はボクシングジムで練習試合を見に来ていたナポラ(ナチ親衛隊のエリート士官学校)の教官にボクサーとしての才能を買われ、ナポラへの入学を勧められる。「学校にも行けない自分にとって、エリートになれる千載一遇のチャンス!」胸躍らせるフリードリヒは父親の猛反対を押し切り、家出してナポラの門を叩く。
親衛隊のミニチュアのような黒い制服、校舎は森の中の古城、そこはまさにエリートの学び舎だった。だが、良家の子弟ばかりの中で工員あがりのフリードリヒはいじめの格好の標的に。孤立するフリードリヒ。
そんな彼にも親切にしてくれる少年が現れる。彼、アルブレヒト(トム・シリンク)は知事の息子でナポラの中でも特別視されていたが、彼はエリート意識を感じさせず、やがて二人は仲良くなっていく。
軍人養成が目的の日々の教練は過酷で、脱落者には余りに冷淡だった。学力より体力を何より尊ぶナチの方針下では、フリードリヒは優等生。一方のアルブレヒトは小柄で見劣りした。彼にはそれを補うに充分な文才があるのだが、アルブレヒトの両親はそんな美点には見向きもしない。
やがて戦況の悪化と共に、ナポラの上級生も戦場に駆り出されるようになっていく。ある晩、捕虜として輸送中のロシア人が近くの森に逃げ込んだという情報が。地理に詳しいという理由から、フリードリヒとアルブレヒトらは実弾を持たされ、アルブレヒトの父である知事の指揮で捕虜狩りに向かうのだったが……。

ショタ属性はないつもりですが、この少年二人がとってもピュアピュアしくて良かった!
特にアルブレヒト!
ボクサーとして特待生になったガタイのいいフリードリヒとは好対照に華奢で、おデコも広い。いかにもインドアな優等生って感じ。かわいい美少年、いいな~、うん、すごくいいヾ(≧ω≦*)!役的にも美味しいとは思うものの、演技も上手い!というか、フリードリヒが主役のはずなのにパッケージデザインもアルブレヒトがメインじゃん…完全に全部持ってってます。や、フリードリヒ役の子も一応美少年の括りだとは思うけど…あう。で、何となく調べてみたら…えっ、アルブレヒト役のトム・シリンクの方が二つ年上!?どー見ても逆…つか、幼く見える… (-_-;)
ストーリー的にも「寄宿学校の少年たちの日常」なところから一転、実弾訓練の悲劇、ナチの殉死賛美の欺瞞、勝手な大人たちの思惑、少年の苦悩…とあざとくなりそうな展開を上手く抑えつつ展開していきます。あざとく感じなかったのは少年たちの熱演の賜物かもしれません。
映像も秋から冬へと移ろう中、物語とリンクするように色が無くなっていきます。雪に霞む城が、全てを包むようで実に美しいです。
オチは予定調和といえば予定調和な感じですが、きれいにまとまってるなと思いました。でもフリードリヒ、どっちみち前線に送られる運命だよな…。

エンドロールに、ナポラの生徒の半数15000人が戦死したと説明が。その事実を思うと何とも虚しいです。そこも踏まえた上での作りなんでしょう。さすがドイツ映画、手堅い。

ですが何よりこの映画は美少年の熱演!SS制服好きにも一見の価値アリ!です。

拍手[4回]

映画『白バラの祈り~ゾフィー・ショル、最期の日々~』(2005年ドイツ)をDVDで見ました。

白バラの祈り
この映画、副題が「最期の~」で既にネタばれなので、今回はネタばれ前提です(^_^;)

ゾフィア・ショル(タイトル表記、日本での通常の紹介でもゾフィーですが、字幕も発音もゾフィアだったので以降はゾフィアで)と兄のハンス・ショルは、1943年2月に反ナチ文書を撒いた罪で処刑された実在の人物です。冒頭に「最新の証言を元にした」と注釈があるだけあって、映画的な派手さを期待すると肩透かしを食らうかも。

ショル兄妹は大学の友人知人と一緒に「白バラ」として地下活動を始め、反ナチ啓蒙ビラをゲリラ的に各家に投函していた。ドイツの戦況が悪化する中、紙の物資不足や国内移動の困難さに悩まされながらも、彼らは活動を活発化させていく。ゲシュタポは「白バラ」を危険思想とみなし正体を探っていたが、郵便物の投函場所が多岐に渡っていたため実像を掴めないでいた。そして、仲間から「危険過ぎる」と止められながらも兄妹は大学のホール内でのビラ撒きを強行。要所ごとにビラの束を置いていったのだが、ゾフィアは階段の手すりからわざとビラの束を落とし、職員に目撃されてしまう。

と紹介しましたがこの話、ドイツでは周知の史実なのか、映画では大学ホールに至るまでの過程はほとんど出てきません。映画だけ見ると「大学でビラ撒いただけなのに…」て感想を持ちかねない感じです(まあ本当にビラ撒いた「だけ」ではあるんですが…)
映画の見せどころは直後の逮捕から取り調べ、悪名高い人民裁判での様子です。取り調べが意外にも紳士的に行われたことは当時の記録にも残されていますが、部屋が想像してたのと全然違う!書斎のような、執務室のような立派な部屋にちょっとびっくり。唯一扉が防音仕様なのがそれらしく見える程度。実際もこうだったんでしょうか。そして気になったのは…部屋では上着を脱いでいること。2月のドイツで、「本物のコーヒーだ」とか言ってる物資のない状況で、暖房だけはがんがん焚いてたんでしょうか??そんな本筋とは違うところばかり気になってしまったんですが、肝心のゾフィアといえば…なんとなく共感できない…(-_-;)
史実からみれば、二十歳そこそこで処刑も辞さず(回避する選択肢もあったのに)人民裁判で自説を堂々と述べた彼女はすごい人です。だけど映画では…なにか違和感が…。なんでそんなに頑張るの?とか思っちゃう。もうちょっと軍にいる恋人との回想シーンとか、普通の女の子を感じられると良かったのかなあ。最後まで見ても事件の要の「なぜビラを手すりから落としたのか」が分からない(…逆切れ?)彼女の思想のバックボーンがあまり描かれないので、身近な人間として理解できないのかも。う~む、惜しい…。
人民裁判(弁護人が一言も弁護しない名ばかりの弾劾裁判)での判決の後、兄妹と友人1名は即日処刑されます。自らの行動に誇りを持ち、目前の処刑も怯まない兄妹に対し、子持ちの友人は大いにうろたえます。かっこ悪いけど、…彼の方が人間臭く感じました。守る者の有無ってこんなに大きいんだな、と…。
そして処刑。ここでも処刑を待つ部屋のランプシェードが不似合いなキレイさだな~、とか脇道に気がいっていると…。
え…!?   ギロチンーーー!?
だって20世紀ですよ!?「ワルキューレ」でも銃殺とかピアノ線で首くくるとかだったのに…。なんでギロチン!?見せしめ??でもワルキューレの処刑だって見せしめだったはず…。なんでー??そして処刑執行人はシルクハットだし。これも何か意味があるんでしょうか。

最後まで本筋と関係のないところに目が行ってしまった映画でしたが、ラストのギロチン(と、そのカメラショット)があまりにも衝撃的だったので感想を。作りは地味な映画ですが、21世紀の「アラブの春」を思うと実に切ない話です。現代は本当にいい時代になりました…。



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※2014年6月21日追記。

で、このラストのギロチン処刑の違和感に関して、ずーーーーっと秘かにもにょもにょしていたわけですが、今日なんか謎がとけました(ような気がする)!
本日放送のテレビ東京『137億年の物語』はマリー・アントワネットについてだったのですが。最後の方の説明で「フランスでは1981年までギロチン処刑が制度化されていて、最後の執行例は1976年に行われている」と!(あ…細かい年数は違うかも。3歩歩くと忘れるトリ頭の哀しさ…)
戦後までギロチンて現役だったのーーー(li;;゚;ノω;゚;;)ノ!!??
ええええええええええええ!?
だってだって…何なのそのこだわり…発明国のこだわりですかw!?

………とゆーことで、多分このゾフィーのケースも「普通」だったのではないかと(国違うけどまあ隣だし(^_^;))。ピアノ線で首くくるとか、銃殺の方が本当は異質なケースだったのかもです。
なんかすっきりしました。『137億年の物語』に感謝♪
関係ないけど、『137億年の物語』は良い番組です。好きです。寺脇博士ステキっす(〃゚ω゚〃)
全国放送になってないのが納得いきまへん。
テレ東ありがとう♡ひとつカシコクなりました(無駄知識的に…)。



拍手[1回]

渋谷シアターNでリバイバル公開されたエミール・クストリッツァ監督『アンダーグラウンド』(日本初公開1996年)を見てきました。


映画『アンダーグラウンド』

これ、テレビ放映されたことがあって「カンヌのパルムドールとった話題作だからちょっと見よっか」とながら見気分で見たら(何しろ約三時間の大作^_^;)その強烈な印象に、もう一度ちゃんと見たいと思い続けてたのです。滑稽なシーンなのになぜか哀しく、悲しいシーンなのにどこか可笑しい…不思議な空気感の映画です。でも現在DVDは絶版…貴重な機会を逃すわけにはいきません。

物語はユーゴスラビアを舞台(監督も土地の人)に、第二次大戦中のナチスドイツの支配、ソ連、独立ユーゴのチトー政権、ユーゴの解体という、長い月日を描きます。レジスタンスを気取る(泥棒だかヤクザだかとっても微妙)親友同士のマルコとクロ、彼らが惚れる女優のナタリア(ミリャナ・ヨコヴィチ 女優役にふさわしいとっても美人な女優さん)は自分に夢中なドイツ軍将校フランツとクロを手玉に取って時代を上手に生き抜いている。ナチのお尋ね者ながら行動が破天荒なクロはやがてドイツ軍に捕まるが、マルコのお陰で脱出。だが重傷を負い(あり得ない自分のおバカミスのせいなのだが…)地下室に身を隠す。この地下室、何人住んでるのかわからないような広さで銃器密造所でもあった。
やがてナチスドイツは敗戦。ソ連、ソ連の傘の下によるユーゴ独立、共産主義チトー独裁政権へと時代は変わる。
文才があり、弁も立つマルコはレジスタンスの英雄としてちゃっかり党幹部へと成り上がり、地下室の人間を騙して作らせた武器を闇でさばきつつ、ナタリアと結婚もする。一方、地上の一切を知らない「殉死した英雄」クロは、マルコに「チトーは君を決戦の切り札として地下に潜伏し続けることを望んでいる」と麻薬のような言葉で欺かれ、来るナチスドイツとの戦いを地下室で夢見続ける…。

※以下はややネタばれです。

この映画、「真の悪人」も「真のヒーロー」も出てきません。マルコは幾多の人間を騙して地下室生活を何十年も強いてきた極悪人ですが、結局自ら党幹部の地位を捨て去ります。酒に溺れるナタリアから酒を取り上げる手段も憎めません(酒瓶を自分の頭でかち割っちゃう。なんか…愛です 笑)クロもヒーローとは言い難いいい加減さで、悪役ポジションのはずのナチス将校フランツもクロを追い詰めながら殺しはせず、ナタリアには優しい紳士です。
象徴的だと感じたのは、後半酒に酔ったナタリアがマルコに突っかかって「私の青春を返してよ!」と言い放つシーン。彼女は常に自分に最も有益な男を選び、傍目には恵まれた位置に立ち続ける悪女です。しかし彼女もまた戦争に翻弄された一人。この一言が彼女の人生を語っているような気がしました。
なにより印象深かったのは終盤、マルコに許しを請われたクロが言う「許そう。だが忘れんぞ」の台詞。この言葉に監督の、バルカンの未来への思いが込められている気がしてなりませんでした。

多民族国家、バルカン半島の複雑な歴史は、島国民族日本人には感覚的にどうしても理解できない部分がある気がします。『アンダーグラウンド』はそんな感覚的な理解を促してくれる映画ではないでしょうか。
また、全編を包むロマの陽気でパワフルなのに哀愁漂うブラスバンド(「カラシニコフ」はなんとも言えない疾走感!)、ブルガリアンポリフォニー、ドイツ軍の象徴「リリー・マルレーン」…。土地を感じさせる音楽はいつまでも耳に残ります。
テレビ放映時はボスニア紛争中だったので、ラストシーンに(こんな形でしか幸せになれないのかなあ…)と、すごく切なくなったものです。ですがひとまずは平和になった現在(ああ本当に平和になって良かった…!)と穏やかな気持ちで見られました。
まあでもなによりポイント高かったのは、ナタリア役の可愛い系美人女優さんの存在です。彼女がいないとむっさいひげオヤヂと、妙にリアルで小汚い背景だけになってしまうので(笑)。歴史背景を事前に少し知っていた方がより楽しめる映画だと思います。

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広枝出海
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