やさぐれ漫画描き、広枝出海のブログです。 創作同人情報、美術展やら映画感想など 獺祭状態でつらつら書きたいな~、と。 カワウソは取った魚を祭るように陳列するそうですが、散らかしているだけとは言ってはいけないお約束(^_^;) 無断転載はどうぞご遠慮下さいませ<(_ _)>
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この映画、一言で言えば「ブリューゲルの絵が動く」んです!
……そのまんまやん/(^_^;)!
でも、まあどういったジャンルかと説明も難しく…。タイトルが全てを語っているとしかいいようがなく…。
がっ!
ブリューゲル好き、あの辺りのフランドル絵画好きなら一見の価値は大いにある映画だと思います!
物語は、パトロンである銀行家の求めに応じて、ブリューゲルが世相批判を込めつつ『十字架を担うキリスト』を制作していく過程を丹念に描いていく、というもの。
構図の意図、発想の源…。合間合間に当時のフランドルの音楽や農民の風俗が織り込まれていて、「当時はこんな感じだったのかぁ~」とリアルさに感心しちゃいました(何がリアルっておうちの汚れっぷりとか農民の開けっぴろげな感じが…(´ω`:))。
けど、主題が『十字架を担うキリスト』って知らずに見たので、途中まで状況が理解できなかった私((((;´・ω・`)
だって台詞が入るのすら始まって30分近く経ってから(!)
台詞で説明しきっちゃうのもどうかとは思うけど、ちょっと…かなり観客を突き放した作りです。全編において台詞はものすっごく少ないです。「このニコラス・ケイジ的な黒服のおっさんだれ?」とか…おっさんがユダだって分かるまでの道のりの遠いこと(笑)
私のブリューゲルのイメージは『ネーデルラントの諺』や『怠け者の天国』なんかの割と牧歌的な「農民画家」でした。なのでこの映画で「ブリューゲルって結構血生臭い時代の人だったのか~!」とちょっと開眼(や、ほんとに何にも知らなかったので…ヘリウム入りのオツムの哀しさ (。-ω-)あ、ヘリウムも今や貴重なんだっけw)
ブリューゲルの生きた16世紀前半は彼のルターの宗教改革真っ盛りな時代だったんですね。
で、発祥のご近所ってことで(?)フランドルはプロテスタント。なのに統治者のハプスブルクが分裂して、ネーデルラントはスペイン(イスパニア)ハプスブルクのカール5世の統治下に。こっちはばりばりのカトリックだったので、ネーデルラントでは異端への見せしめ処刑が日常になってしまいます。
そう知るとブリューゲルの絵の見方も重くなるなぁ…。
映画では、このカール五世下のスペイン騎兵(赤い軍服が鮮烈で印象的)のプロテスタント狩りの残虐さが一番のドラマです。
捕えられたプロテスタントがキリスト磔刑になぞらえて処刑される様。それを「時代をフランドルに移した『十字架を担うキリスト』」としてブリューゲルが画布に封じ込めるのです。
とはいえ、映画では宗教改革とか当時のヨーロッパ政治についての説明も少なく…。
キリスト教を全然知らないとかなり厳しい映画です(-_-;)
予備知識があっても、ドラマらしいドラマがあるわけではないので、気力と集中力が充実してないと意識が飛ぶ恐れあり(笑)
睡眠不足の時には見ない方が賢明です (_ω_)
一番「おお~!」と感動したのは、絵では小さく描かれた「岩山の上の風車小屋」。
映画のブリューゲルはこれを「全てを見下ろす神の目」だと説明していますが、この内部のセットが圧巻です!絵では当然内部なんて描かれていませんが、大きな歯車、洞窟を上へ上へと這うように続く長い階段(これCG?セット?すごいリアリティ…!)だけでもう圧倒されます。
このシーンだけで見た甲斐があったかな、と。
もう一つは役者のいぶし銀な豪華さ!
ブリューゲル役のルドガー・ハウアーは『ブレードランナー』でレプリカント役だった人だと後で知り「おお~!」。
そしてマリア役はシャーロット・ランプリング。
『地獄に墜ちた勇者ども』に、そう!『愛の嵐』ですよ(〃゚ω゚〃)!!ハスキーな声はそのまま、自然に美しく年とってます。
あの『愛の嵐』の女優さんが、と思うとなんか感慨深かった…。
で、「これだけ当時の習俗を描き込んでるのに英語ってのがなぁ…せめて現代オランダ語だったらもっと雰囲気出たんじゃ」と若干がっかりしてたんですが(いやどっちもわかんないけど。雰囲気雰囲気(^_^;))。
…えーとナニなに?
フランドルは「オランダ南部ベルギー西部フランス北部にかけての地域」!?
で、ネーデルラントというのが今でもオランダの正しい呼び方Σ( >゚ω゚) !?
ネーデルラントってオランダの古名だと…恥。だってだって英語でもHollandって…俗称だとぅ!?
…知らんかった…っ。
なので、何語にするかはかなり難しい、と。更にスタッフの国籍も見事にばらばらなので、英語圏の作品でもないのに英語作品なわけですね。
ううむ、複雑…。